睡眠と理学療法の深い関係

(2310013配信)

睡眠と理学療法の深い関係

金谷 さとみ

理学療法ジャーナルVol.57 No.8

2023.8 p894-899



【文献の要点】


・睡眠は脳や身体機能を正常に保つために必要不可欠であり、生活の質を高める役割を担う理学療法士、作業療法士、言語聴覚士にとって見過ごせない部分である。


・日本人の平均睡眠時間は10歳代前半で8時間以上、加齢によって徐々に減少するが、70歳以上となると8.5時間となっている。


・加齢により睡眠機構が変化し、レム睡眠の減少や覚醒閾値の低下、中途覚醒の増加などが起こる。


・要介護高齢者には睡眠時間の把握だけではなく、1日の総臥床時間も踏まえて、生活の活動量の把握、対策が必要となる。



【文献の基本構造】


 理学療法に関連する睡眠の基礎知識として、睡眠の量や高齢者の睡眠の特徴、要介護高齢者の睡眠、昼寝、ホルモンや精神機能との関係の7つの点から解説している。次に、筆者が興味深い研究として睡眠とフレイルや運動、転倒予防などとの関係の研究を紹介している。さいごに、睡眠が理学療法に与える影響として3つの視点から考えを述べている。



【理学療法に資する様々な研究】


〇Forbidden zone for sleep


 1日のうち深部体温が最も高い時間帯で、生理的に最も睡眠に適さない時間帯のこと。若年者は19~20時あたり、高齢者は若年者より2~3時間繰り上がっているとされている。この時間帯での運動介入により、睡眠の質の改善、ノンレム睡眠の増加といった効果があるという報告がある。



〇睡眠のフレイル


 先行研究から9時間以上の長時間睡眠、6時間以下の短時間睡眠、中途覚醒などがある高齢者は、歩行速度や移動能力の低下がみられる可能性が高くなるという結果がある。



〇睡眠と運動


 習慣的な有酸素運動が睡眠の質を高める報告は多いが、運動様式や量、時間帯といった詳細は明らかになっていないことが多い。最近では、漸増的なレジスタンストレーニングの有効性も報告されている。


〇睡眠と転倒予防


 睡眠薬を服用した入院患者への調査では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬内服患者の転倒率が非ベンゾジアゼピン系睡眠薬内服患者と比較し有意に高かったという研究がある。



【まとめ】


 睡眠の質などといった睡眠に関するワード、話題はテレビなどでも様々取り上げられている。しかし、筆者の経験では高齢者は自身の睡眠について、あまり深く考えていない、睡眠の問題、睡眠を理解できていないケースが多いと感じている。


今後は、対象者に睡眠について理解してもらうことも重要となると考える。

また、睡眠が運動パフォーマンスやADLに影響を与えるという報告もあり、理学療法との関わりも強いと思われるが、効果的な運動の詳細、様々な疾患との関係などは、今後の研究が期待される。


記事:ながちゃん


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