術後6か月が経過した女性人工股関節全置換術患者の生活範囲拡大に影響する術前および退院時の因子
入山渉・宮本梓・金子貴俊・他
総合リハビリテーション Vol.50 No.2 2022.2 pp177-183
Key word:人工股関節全置換術、術後6か月、生活範囲
・THA術前後の患者に関わることのある方
今回は人工股関節全置換術後(以下、THA)の生活範囲に関する研究報告の記事を紹介します。
●術後6ヵ月が経過した女性THA患者の生活範囲に関連する因子を術前および退院時から検討すること
THAは進行期や末期の股OA患者に施行される治療で、除痛や運動機能改善が得られる反面、生活範囲の狭小化が指摘されています。生活範囲は健康関連QOLにも影響しており、生活範囲に及ぼす影響を検討することはQOL維持・向上を目指すうえで需要であると考えられています。今回、生活範囲の指標にはLife Space Assessment(以下、LSA)が用いられています。
【対象】初回THA患者のうち術後6ヵ月の評価を行えたもの
【方法】
【プロトコル】
・術前・・・パンフレットを用いたリハビリの流れや脱臼肢位などの注意点などを含めた患者指導
・入院中・・・術後翌日よりリハビリ開始し午前と午後の1日2回実施
・退院後・・・週1回を目処に全例に促した
〇生活範囲:LSAを用いて評価
※LSA:生活空間を「住居内」、「自宅敷地内」、「自宅近隣」、「町内」、「町外」の5つのレベルに分け、各レベルで生活空間の程度と頻度と自立度の得点を掛けせたもので合計0~120点の範囲を取る。
〇術前評価:
JOA hip score、ROM(患側股屈曲・伸展・外転・内転)、下肢筋力(両側等尺性股外転・内転、膝伸展筋力) ※手術2日前に測定
〇退院時評価:
術前と同じ項目に加え、TUG、開眼片足立ち時間、Five Times Sit to Stand test(FTSS)、2ステップテスト、自覚的脚長差の有無、脱臼不安の有無、転倒不安の有無、屋外歩行不安の有無、疼痛、在院日数
群間比較で退院時の両側等尺性膝伸展筋力と患側股伸展可動域に有意差を認めた
患側等尺性膝伸展筋力と患側股伸展可動域の変化量はLSAの変化量と有意な相関関係を認めた
術後6ヵ月が経過した女性THA患者の生活範囲に関連する因子は以下の2つが考えられる。
・患側等尺性膝伸展筋力の改善
・患側股伸展可動域の改善
術後にとるアウトカムとして評価項目抽出の参考となる研究結果であると思います。
生活範囲の拡大はQOLの向上のみならず、フレイル・サルコペニア予防の観点からも重要な視点ではないでしょうか。今後も生活範囲に着目した研究に注目していきたですね。
・THA術後患者の患側膝伸展筋力、患側股伸展可動域の評価を取り入れてみる
・生活範囲に着目した論文を探してみる
文責:テツ@永遠の若手理学療法士