学校教育現場での疾病予防のための運動療法
川本 晃平 門脇 俊 内尾 祐司
理学療法ジャーナルVol.57 No.12
2023.12 p1447-1450
・児童や生徒における運動器疾患の多くはスポーツ障害が占めている。
・学校教育現場への介入には、成長期の特徴の理解が必要不可欠である。
・スポーツ傷害予防には内的要因だけでなく、外的要因が問題となることも多い。
本稿では、学校運動器検診に理学療法士が介入しコンディショニング指導を実施する筆者らの取り組みについて紹介し、学校教育現場へ介入する上での成長期における運動療法の考え方を解説している。
また、学校教育現場でのスポーツ傷害の要因やスポーツ傷害に対する児童や生徒、教員への指導について述べている。そして、スポーツ傷害予防の運動療法、さいごに今後の展望、理学療法士介入の必要性を述べている。
これまでには運動の生涯発達モデルや子どもの成長、発達段階とトレーニングとの関係が示されており、年齢、成長、発達に合わせた運動、またその指導が必要と言える。成長期には個人差も大きいため、一人ひとりの変化を捉えることがより重要となる。
普段の臨床現場では、年齢や身体機能などの内的因子を考える傾向にあるが、スポーツ傷害予防には外的要因と発生機転が重要となることも多い。
例えば、成長を見越して大きめの靴を履いている、教室の机や椅子も合っていないなどが挙げられる。また、現代の子供たちは、運動過多や運動不足による運動器機能に問題が生じた状態である「運動器機能不全」を抱えていることが多い。
代表的な運動器機能不全は筋肉のタイトネスであり、コンディショニング改善が必要な場合も多くある。
検診に理学療法士が同行することでスポーツ傷害の改善に有効であるとの結果が得られたが、全体の有病率は減少せず、スポーツ傷害を有していない児童、生徒への介入、対応が必要であると示唆されている。
臨床現場で児童や生徒と関わるのは、怪我など受傷後であるケースが多いと考える。高齢者に対する介護予防については各地域、自治体で取り組んでいるところも多い。
児童や生徒に対しても同様に理学療法士など専門職の介入により、スポーツ傷害の予防、運動の知識や必要性の理解を得ることに繋がるのではないかと感じる。
また、スポーツ傷害、運動器機能不全の改善に期待できるとともに、子どものころからそれらの知識、理解を持つことで、年齢を重ねた際、介護予防に繋がることも期待できるのではないだろうか。
記事:ながちゃん