睡眠障害と理学療法

(231027配信)

睡眠障害と理学療法

寝返りと睡眠の関係

山口 正貴

理学療法ジャーナルVol.57 No.8 2023.8 p935-940



【文献の要点】


・寝返りを増やす、寝相を悪くすることで睡眠の改善に繋がる。

・寝返りには褥瘡予防や体温調節、クリープ変形予防などといった重要な役割がある。

・成人では一晩で約20~30回の寝返りを行い、浅い睡眠、レム睡眠時に頻度が多くなる。

・睡眠障害に対しては、覚醒時と睡眠時に分けてアプローチを実施していく。



【文献の基本構造】


 はじめに、疼痛や脳卒中やパーキンソン病など疾患による身体機能低下は、睡眠の質の低下、睡眠時間の短縮のリスクがあり、寝返りの回数の減少に影響するとの報告がある。


また、寝返りが少ない=長時間の同一肢位となると疼痛出現リスクが高くなるなどといった、疼痛と身体機能における睡眠、そして寝返り、寝相との関係について述べている。


そして、寝返りの役割と特徴を挙げ、さいごに、睡眠障害に対する理学療法として、覚醒時と入眠時に分け、アプローチを紹介している。



【睡眠障害に対する理学療法】


〇覚醒時の介入

 有酸素運動では最大酸素摂取量の60%の強度で1時間の実施、筋力強化運動では総負荷量や頻度が増えるほど、睡眠の質の改善に繋がる、効果が高くなるという報告がある。


〇睡眠時への介入

 上述したように、寝返りを行う、寝相を悪くすることで睡眠の質の向上に繋がる。寝相を悪くするアプローチは、寝返りしやすい環境調整と身体機能をつくることである。


・環境調整

 良い寝具とは、寝返りの役割を果たしているもの、さらに寝返りしやすいものである。しかし、寝返りのしやすさと除圧効果は反比例の関係。アライメントや関節拘縮など身体機能面に問題がある場合は除圧を、問題がない場合は寝返りのしやすさを優先し、マットレスなどの寝具を選択する。


・身体機能

 起居や歩行が可能なレベルであれば、関節可動域の拡大が寝返りのしやすさにおいて重要である。寝返り動作に必要な関節可動域を拡大するためのストレッチとして4つの方法を写真とともに解説している。筆者は対象者へのストレッチの実施により、寝返り回数の増加を認め、中途覚醒や起床時に疼痛出現しなかったと述べている。



【まとめ】


 寝返りには様々な役割があり、寝返りをすることで睡眠の質や起床時の疼痛の改善に繋がることが分かる内容である。寝相が悪いと聞くと、一見、良くないことと思ってしまうが、寝返りの役割を理解した上で、あえて理学療法では「寝相を悪くする」アプローチを実施するという点がとても興味深いと感じた。



記事:ながちゃん

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